TOPインタビュー・ハイライト

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17年下期


聞き手 編集局長 島田一

7/10掲載 慶應義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 教授 土屋 大洋 氏
――ランサムウェアなどによるサイバー犯罪が目立っている…。


土屋 5月にランサムウェア「WannaCry」が世界150カ国で20万台以上のコンピューターに感染したことが話題になったが、実は「WannaCry」自体は専門家にとって大きな驚きではない。というのも、対策手段をマイクロソフトが早々に打ち出しており、今回被害に遭ったのはOSをアップデートしていなかったコンピューターばかりだったからだ。ある意味、基本的な対策を行わないユーザーが世界中にこれだけいたことの方が驚きだ。また、「WannaCry」はコンピューターを凍結し、解除と引き換えにビットコインでの身代金支払いを要求するものだが、結局まだ犯人は1円も得ることができていない。身代金を支払ったのはわずか230組ほどと、全体の感染者の0.1%程度にとどまったうえ、支払先に指定された口座を世界中のアナリストや警察が見張っているため、犯人は身代金を引き出せずにいる。

――サイバー攻撃としては大失敗だ…。


土屋 そういうことになる。恐らく犯人はビットコインの仕組みをよく分っていなかったのだろう。「WannaCry」自体も、中身は昔からあるランサムウェアで、それに運び屋となる別のプログラムと結びつけただけで、特段技術的に目立ったところはない。ただ、その運び屋プログラムが米国の国家安全保障局(NSA)由来のもので、波及力が強かったことが世界中での被害につながった。恐らく犯人は小金を稼ぎたかっただけで、今回の被害規模は犯人にとっても予想外だったと思われる。実際、犯人は支払われた身代金を受け取れていないし、支払い者のコンピューターを復旧することもできておらず、「WannaCry」はナンセンスな攻撃と評価せざるをえない。一部では北朝鮮が攻撃元という見方もあるが、あまりにレベルが低いため、国家ぐるみの事件とは考えにくい。もし実際に犯人が北朝鮮関係者だとしても、個人的犯行である可能性が高い。6月末に再びウクライナを中心としてランサムウェアによる攻撃が行われたが、こちらは身代金を要求するふりをした悪意あるウクライナへの妨害工作であるとみられる。ただ、低レベルな攻撃であることに違いはなく、ロシア政府が関与している可能性は低いとみている。あるいは、はじめから金銭目的ではなく、業務妨害が目的だったのかもしれない。


8/7掲載 青山学院大学 大学院 会計プロフェッション研究科 教授 八田 進二 氏
――今の監査制度は投資家保護に貢献しているのか…。


八田 監査制度の根幹をなす公認会計士法は、戦後、新たに証券取引法(現在の金融商品取引法)が制定された同じ1948年にできたもので、投資者保護という証券取引法の趣旨に合致する形で運用されてきている。当時は直接金融の割合が低く、現在のように市場が機能していたわけではないが、監査が投資家保護のためであることは明らかだった。ただ、当時は大企業であっても監査は個人の公認会計士で対応しており、会社の圧力に屈し誤った意見を出す事例も頻発した。また、企業の活動も複雑化が進んだため、組織的な監査を行う目的と監査人の独立性を一層強化するよう、1966年改正の公認会計士法で監査法人の仕組みが誕生した。監査法人は5人以上の公認会計士が社員として出資し、連帯して無限責任を負う点が特徴的である。監査法人が誕生した当時は、今より少ない人数の会計士が、合名会社や組合の様に運命共同体的な視点で監査業務を行うことが前提にあり、現在のように出資者である社員が数百人もいる大規模な組織となることは想定されていなかった。そのため、現在ではこの大規模組織で意思決定ができるよう、代表社員を定めているが、これらの代表社員が、組織運営に必要なマネジメントに長けているわけではない。また、本年3月には監査法人のガバナンス・コードが定められ、第三者の視点を入れて経営するべきとされているが、監査法人の経営マネジメントができる人材は極めて少ない。コードでは、通常の会社経営と同様のガバナンスが求められるが、監査法人の成り立ちはそもそも通常の企業と異なっている。監査法人の仕組みができた当時は、独立性を持った専門家集団を作り上げる役割を果たしていたが、監査法人の組織が大規模化した今では、既に歴史的な役割は終えたのではないかと思っている。

――監査法人の制度が時代に合わなくなっている…。


八田 まず、監査法人の規模が拡大した今でも、何か監査上の不祥事が起きれば、自分とは全く関係のない他の社員が起こしたものであっても、原則として、連帯責任として全員が処分を受けることになる。2006年の、みすず監査法人(前身は、中央青山監査法人)の解散は象徴的な例だ。カネボウの粉飾決算に絡み、2カ月間の業務停止処分を受けたことで、会計監査人としての法的地位を喪失したため、この間一律に上場会社を含む数千社の顧客の監査業務を担当することができなくなった。その結果、公認会計士法の改正もなされて、一部、有限責任制度が導入されたが、今でも他の監査チームがどのような監査をしているかはわからない状況には変わりがない。また、監査法人による財務基盤の確立がしにくくなっている現状がある。監査法人の収入源は法定監査報酬のウエイトが高いが、法律で定められた義務としての法定監査は、企業側ができるだけコストを下げようとするため、監査法人側ではギリギリのコストで監査することにつながりやすいうえ、契約更新を前に経済的なプレッシャーがのしかかることになる。こうしたことから、監査法人は、会計全般で潤沢なサービスが提供できる総合的な会計事務所に転換を図るべきだと思っている。米国のエンロン事件では、会計事務所が監査報酬とコンサルティング報酬を同時に受け取っていたことで信用を失った。このため、総合的な会計事務所に対して反対する向きも多いが、エンロン事件後の米国での制度も検討して、監査人として利益相反が起きない仕組みとすれば良いのではないか。


9/19掲載 環境大臣 中川 雅治 氏
――8月の内閣改造で環境大臣に就任した…。


中川 環境行政で対応すべき課題は様々なものがあるが、環境政策を経済成長の新たなけん引役にしていきたいと考えている。 日本の環境技術やノウハウを海外に輸出することも促進し、環境問題への取り組みによって同時に社会経済上の課題を解決していきたい。また、国民が環境に良いものを優先的に購入するという環境マインドを高めるよう取り組みたい。これらの施策により、将来にわたり質の高い生活をもたらす、持続可能な社会を実現できるようにしたいと考えている。この点、20年にはオリンピック・パラリンピックが東京で開催されるが、諸外国に対し環境先進国としての取り組みを示していきたい。そして、これを契機に、11年に起きた東日本大震災からの復興を印象づけられるようにしたい。

――環境事務次官に就任していた15年前と比べ、環境省の取り組みも変化している…。


中川 東日本大震災の発生により、環境省の重要な仕事として福島復興に向けた取り組みが加わった。除染や中間貯蔵施設の整備、汚染廃棄物の処理、福島県民の健康管理という重要な任務がある。これに伴い、予算や人員も格段に増加した。原子力規制委員会は独立性が高いものの、環境省の外局であるため、委員会の予算や人員のサポートも仕事となる。任務が増えたことで、責任もますます大きなものとなった。予算規模では、復興特会の予算を含めると1兆円程度になる。環境省が当初から所管する分野だけでも3000億円程度となるが、これだけでも15年前に比べて格段に増加している。これに加え、福島復興関連の予算が7000億円近くとなる。職員数も、当初の500人程度から比べ、環境省全体で3000人程度と増加した。


10/23、10/30掲載 元大蔵省証券局審議官(東証監理官) 河上 信彦 氏
――山一証券の自主廃業から今年で20年が経つ…。


河上 1997年の11月24日月曜日の開業時間前に山一証券は取締役会を開催し、自主廃業を決定した。その後、当時の三塚蔵相が同日午前10時半に記者会見を行い、世間的にはそこから大騒ぎとなった。私は東京証券取引所監理官として山一証券の自主廃業に関与したが、状況はその以前から混乱しており、その前段となる同年11月3日月曜日の三洋証券の破たんが大きく影響している。

――三洋証券の破たんはどのように影響したのか…。


河上 三洋証券は生命保険会社の劣後ローンをロールオーバーすることができず破たんに陥った。ただ、その直前に無担保コールを借り入れていたため、三洋証券の破たん後に短期金融市場はマヒ状態に陥ってしまった。無担保コール・ローンの出し手は当然相手が破たんすることはないという前提で資金を貸すわけだが、三洋証券のケースでは10億円の無担保コール・ローンを供与していた群馬中央信用金庫が回収不能となり、それまで安全に取引を行えると思っていたコール市場の資金の出し手は激減してしまった。その悪影響は当時不良債権で苦しみつつあった銀行へと波及していき、同年11月17日月曜日の北海道拓殖銀行の破たんを招くことになる。こうしたなか、山一証券の資金繰りもかなり厳しくなっていることが週刊誌などで報道されていたが、私にとって山一証券問題が顕在化するきっかけとなったのが11月14日金曜日にロンドンからもたらされた連絡だ。

――ロンドンからの連絡とは…。


河上 私が山一証券の問題に関わりを持ったきっかけも、この11月14日金曜日だ。私はこの当日、東証監理官として当時の長野証券局長に代わり大阪証券取引所主催のセミナーでスピーチをしていた。午後1時頃にセミナーが終了し、私が会場のドアを出ようとしたところでBridge Newsという東京に拠点を置く外国通信社の記者が接触してきて、市場では山一証券破たんの噂があると取材をしてきた。私は「担当者ではないので知らない」と返答し、逆にその噂について話を聞こうとしたが、周囲にいた大証の方々がその記者を引き離したので情報は得られなかった。その後、新幹線で帰京するために新大阪駅に向かい、駅の公衆電話で証券局の柏木証券市場課長に電話を掛けた。当時は株式市場が午後3時に終了すると証券市場課長が当日の市況について証券局長に報告することを知っていたので、私は「東京の外国通信社の記者がわざわざ大阪まで来て私に接触してきた。記者が確認を取りたかったのは『山一証券破たんの噂があるがどうか』ということであった」と伝えた。私は平成4年夏から平成6年夏まで大蔵省で為替資金課長を務めており、外国の通信社や国内報道機関の記者とのやり取りも経験していたが、記者が局長に接触して破たんの噂について聞こうとすることは大変なことであり、すでに何らかのニュース源を持っているということをすぐに察知した。そこで柏木証券市場課長には、夕方に証券局長へ市況報告をする際に、私に通信社の記者が接触してきたこと、山一証券が破たんする可能性があるかもしれないことを伝えてほしいと依頼した。


11/6掲載 NPO法人3・11甲状腺がん子ども基金 代表理事 医学博士 崎山 比早子 氏
――福島県での小児甲状腺がんの多発と、原発事故との関連性が未だに認められていない…。


崎山 福島県が原発事故以後に実施している県民健康調査の検討委員会で報告されるデータでは、事故当時4歳以下の小児甲状腺がんの発症はないことになっている。福島県立医科大学(県立医大)・長崎大学の山下俊一副学長は、4歳以下の子どもは福島県で甲状腺がんを発症していないため、5歳以下の子どもの発症例が多いチェルノブイリ原発事故とは異なり原発事故との関連性は考えにくいとの意見を表明している。ところが、県民健康調査の2次検査の時点で経過観察となり、その後に小児甲状腺がんと診断された場合は、検討委員会へ報告されるデータに含まれていないことが明らかになった。経過観察となった子どもの手術は県立医大で行われたにも関わらず、それも公表自体がなされていない。検討委員会で公表されたデータによると、福島県で事故当時18歳以下の子どもで検査を受けた約30万人のうち、甲状腺がんまたはその疑いがあると診断された子どもが191人(2017年3月現在)だった。3・11甲状腺がん子ども基金の活動を通じ、さらに8人多いことが判明している。当基金は甲状腺がんまたはその疑いがあると診断された25歳以下の子どもに10万円の療養費を給付しているが、検討委員会では発表されていなかった事故当時4歳だった子どもの家族から申請があった。この子どもは、県民健康調査の2次検査の時点で経過観察となっていた。また、支援を申請した子どもの家族のなかでも、県立医大或いは大学と提携している医療機関以外で手術を受けた場合は県のデータには含まれない。

――福島県での発症率は明らかに異常に高い…。


崎山 小児甲状腺がんの発生は、国際的に100万人に1~3人程度と言われている。年齢が低くなるほど発症は極めて少なく、5歳程度の子どもではほとんど見られない。一方、福島県では検討委員会のデータでも30万人に対し191人程度が甲状腺がんまたはその疑いと診断されており、明らかに一般的な発症率よりも異常に高いと言える。検討委員会でも、小児甲状腺がんの多発そのものは認めている。県民健康調査の検討委員会が取りまとめた報告書にも小児甲状腺がんは「数十倍のオーダーで多い」と明記された。県民健康調査は環境省の支援事業となるため、検討委員会の結論は政府の結論に等しい。


11/13掲載 龍谷大学 社会学部 教授 李 相哲 氏
――米国は北朝鮮を攻撃するのか…。


 微妙なところではあるが、攻撃を実施する可能性の方が高いと考えている。数字にするなら確率は51%といったところだろう。まず、現時点で米国と北朝鮮のそれぞれが追及する政策目標は完全に相反している。米国は北朝鮮が核技術をテロリストに売却したり、北朝鮮に対抗するために日本や韓国が核武装したりする可能性を警戒しており、北朝鮮の核兵器保有を絶対に許さない立場だ。世界中に核兵器が拡散し、米国の超大国としての地位が揺らぐような可能性を、米国が看過するはずがない。

――北朝鮮側としては核を手放すわけにはいかない…。


 北朝鮮としては対外的にも、対内的にも、放棄はありえない選択肢だ。北朝鮮の保有する通常兵器は劣化しつつあり、新しい武器も購入できず、とても米国に太刀打ちできる状況ではない。そのため、北朝鮮は核兵器や、貧者の核兵器と呼ばれる生物・化学兵器に頼らざるをえない。北朝鮮はイラクのフセイン氏やリビアのカダフィ氏が最終的に殺害された原因を、核兵器を保有していなかったためと捉えており、自身が生き延びるために核兵器は不可欠だと考えている。また、対内的には、政府がこれまで核兵器さえ保有できれば国民が豊かになると喧伝してきたという事情がある。以前から北朝鮮は、軍事力を増強して韓国を征服すれば経済問題は解決するとして、国民に我慢を強いてきたが、これまで成果を出すことができなかった。ここで核兵器を手放すようなことがあれば、金正恩の権威は失墜し、求心力が失われてしまうだろう。