証券監視委を三条委員会に

証券監視委を三条委員会に

衆議院議員
塩崎 恭久 氏


聞き手 編集局長 島田一

――企業の不正会計問題に対する意見は…。


塩崎 東芝(6502)の会計不正では、担当監査法人に行政処分が下された。その後、監査法人は交代となり、行政罰だけでなく社会的にもペナルティを受けている点では十分に「授業料を払った」と言えなくない。ところが、会計不正を実際に行った経営者側では、誰も処分を受けていない。それどころか、証券取引所側の人が、監査法人の監査は必ずしも正しいとは限らないという主旨の発言をした。これでは、資本市場の中心にいる人が監査に不信感を持っているということに他ならず、看過できない発言だ。東芝は2年間の間に内部管理体制に改善が認められたとして、上場廃止を免れた。そうなると、一度は会計不正をしても許されるということになってしまう。つまり、日本の資本市場は健全と言えず、質が問われていると言えよう。

――不正会計に対する処分はどうあるべきか…。


塩崎 資本市場の健全な機能がもし働いていれば、不正会計を行って投資家をだましたという点で瞬時に上場廃止になっておかしくない。ルールに違反すれば、罰せられるということが貫徹していない市場にはならないはずだ。監査法人が行政処分を受けるならば、元々不正会計を行った経営者側の人間も何らかの処分を受けなければならない。首謀者が罰則を受けない国というのであれば、世界的にも示しが付かない。そしてこのような結果を招いた一因としては、証券取引等監視委員会の法的位置づけがあげられる。証券監視委は、いわゆる八条委員会という各省庁の内部に設置される機関となる。この八条委員会の形ではなく、省庁の外局として置かれ独立性がより高い三条委員会の形で、かねてより提案している「日本版SEC」を立ち上げることが大事だ。今の証券監視委は、課徴金を課す場合でも金融庁長官に勧告するという立場になり、自らで実施できないのが現状だ。検察なしに告発もできないままでは、日本の資本主義が健全な機能を発揮することは難しいだろう。

――金融行政についてはどう見るか…。


塩崎 金融行政では、地域金融機関の強化と再編が大きなテーマとなっている。地域金融機関にとって、今のゼロ金利環境が経営に悪影響となっているのは間違いない。だが、利益減の要因はこれだけではない。産業構造の転換期には様々なリスクがつきものであり、地域金融機関も乗り切るだけの経営体力を付けなければならない。また、地域の産業を育て、経済の新陳代謝を図らなければ、生産性の低さは変わらない。上場企業は、コーポレートガバナンスコードの策定という形式が整い、後は実際の経営努力というところまできている。一方、地域金融機関が融資する中小企業では、まだこれからといったところだ。地域金融機関も担保主義から脱却し、事業性評価の重視を進めるようになってきているものの、現状の低生産性が示すのは低成長と低賃金で、生活水準があがらないということにつながってしまう。長時間働かなければ競争に勝てないという、働き方改革の問題とも関わっている。例えば、日本の卸小売業ではアメリカと比べ4割程度の生産性しかないという。製造業でも、自動車産業など一部を除いてはアメリカの方が優位だ。金融業の生産性も低い水準にとどまっている。1人あたりの時間単位での生産を上げるには、投資が最も効果的だ。中小企業の活性化に向けても、ITやAIへの投資が不可欠になると考えている。

――中小企業に対する地域金融機関の役割が重要だと…。


塩崎 中小企業の活性化に向けては、地域金融機関がリードしないと上手くいかないだろう。地域金融機関が企業を育てると同時に、退場すべき企業の退場を進めないといけない。ところが、公正取引委員会は未だに1県1行という主義にとらわれている。県が経済圏であるかのような考えは既に過去のものだ。この考えに沿っていれば、地域金融機関の再編は進まないだろう。地域金融機関でも、1県1行という垣根にこだわり利益が低いままであれば給料があがらず、生活水準が向上しない。中小企業側でも、県内だけに限ったビジネスなどほぼ考えていないだろう。地域金融機関の強化が進まなければ、日本経済の再生も不可能だ。

――このほか、資本市場における問題点は…。


塩崎 コーポレートガバナンスコードの策定により、社外取締役の導入に力を入れる上場企業は増えているものの、お飾りに留まるケースもなお多いようだ。社外取締役が官僚の天下り先になるとの批判もあるが、役人が社外取締役になること自体はかまわない。社外取締役として課せられた自らの役割をわきまえることが大事だ。社外取締役に対し徹底的に理解してほしいという企業が見られる一方で、導入したもののなるべく事業に関わってほしくないという企業もある。このように、企業側の姿勢に問題があるケースもあり、今後は実効性のある運用が望まれる。

――資本市場と個人のかかわりは…。


塩崎 厚生労働省では個人型確定拠出年金(iDeCo)を推進しているが、なお安全資産が多い。安全資産のみでは資本市場は発展せず、健全なリスク管理のもと、リターンを取っていくことが今後の課題だ。だが、東芝の事件のように資本市場が健全でなく、恣意的な運営であれば不安感もぬぐえず、個人がリスクを取るという投資行動をとりにくい。この点からも、市場のルールは厳格に運用しなければならない。